観光土産に見る中小企業マーケティングのヒント

 先日、「旅酒」なるお酒をお土産にもらいました。
 各都道府県の観光地と日本のお酒を紹介することを目的に、お酒をシリーズ化したものだそうです。メインターゲットは外国人観光客のようですが、ライトな旅行好き・お酒好きの層にも訴求力のある上手い企画だなぁと感じました。  

地域名とシリーズの通し番号が特徴的な旅酒のパッケージ  

 旅行に行く度に、その土地のご当地キティを買い集めている知人がいましたが、観光地をモチーフにシリーズ化された商品をついつい買ってしまいたくなったりしますよね。そういったわくわく感があって面白い、という話を社長にしたら、「旅酒に選ばれたら売れるだろうから、蔵元で取り合いになるのではないか」と言われました。確かに、私も売れる商品だと思います。  

 旅酒のひとつのポイントは、「旅酒」というパッケージで製造元が隠れるという点です。なので、知名度があって、買い手からの支持も得ているお酒であれば、旅酒として売り出すメリットはさほどありません。一方で、小規模~中堅の酒造所にとっては安定的な出荷が見込める魅力的な商品となると考えられます。少し調べてみたところ、その土地の代名詞となるようなお酒を出している酒造が選ばれているわけでもないようなので、実際、小規模~中堅酒造向けの企画という面もあるのかもしれません。現実的には生産能力などの要素も考慮しての選定となるのでしょうが、セールスの点から見ても面白い試みではないかと感じました。  

 店頭に並ぶ商品には「パッケージ」という買い手の視覚に訴える武器があります。それでも、類似の商品が無数に存在する昨今、パッケージだけで買ってもらえる商品になるというのは難しい。その中で、異なる地域を繋ぎ商品をシリーズ化することで、買い手が店頭で現物を見る前から商品のアピールができる仕掛けというのは強みになり得ます。  

 自由化を受けて、エネルギー業界でも、今後は売り手から買い手へのアピールが必要になってきます。既に、他業種とのコラボの流れも見られるようになってきましたが、旅酒のような取り組みは中小規模の会社が生き残っていくヒントになるのではないかと思った次第です。

(2016/7/1)

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コラム執筆者:伊藤小由美

伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリースタッフ。前職は青果流通業で、在庫管理・営業・内部監査等経験してきました。スタッフコラムでは日々の活動を通して感じたことを紹介していきます。